第7章 Phantom pain~幻肢痛~【薄桜鬼】
やはりを西国へ連れ帰るべきだろうか。
確かに俺はとの子を渇望している。
ならば常に俺の手元に置いて、何度も何度もに種付けする必要があるだろう。
だが、それだけか?
の想いは?
の兄はどうする?
………は俺を喰わずに居られるのか?
そんな事を考えながら、寝転がった俺の腕の中に居るの髪を玩んでいた。
「千景様。」
唐突に名を呼ばれの顔を見つめると、何かを決心した様な強い視線を俺に向けている。
「どうした?」
「物心が付いた時から、私は兄と二人きりでした。」
俺の考えていた事を悟ったのか、は己の身の上を語り出した。
「自分が何処でどうやって生まれたのかも知りません。
只、ずっと兄と二人で必死に生きてきた。
自分が普通の人間では無いことも分かっています。
時折どうしても血肉を貪りたくなるんです。
自分が悍ましくて……怖い程に。」
そこまで一気に語ったは、怯える様に身体を震わせる。
俺がそんなを力強く抱き寄せてやると、安心したのかまたぽつぽつと言葉を紡ぎ出した。
「それでもそんな欲求は森の中で獣を狩って
どうにか凌いでいました。」
ああ……あの血の匂いはそういう事だったのだな。
「人間の集落に溶け込み、
目立たず波風を立てない様に暮らしていても
何時まで経っても年も取らず、
容姿が変わらない私達は異質な存在になってしまうのです。
そして人間は何時も………
異質な物を排除しようとする。」
の言っている事は痛い程に理解出来る。
俺自身も『異質な存在』なのだから。
そして、それがどういう結果を持たらすのかも……。
本当に人間とは愚かな生き物だ。