第7章 Phantom pain~幻肢痛~【薄桜鬼】
「あ……気がつきましたか?」
入って来た女が俺を見てそう声を掛けて来た。
華奢な身体つきで儚げな女。
その薄幸そうな佇まいが持って生まれた美貌を際立たせている。
「食事…食べられそうですか?」
女は静かに俺の前に椀の乗った盆を差し出す。
俺が湯気を立てている五分粥が入った椀を見つめていると
「こんな粗末な物しか用意出来なくて。
貴方の口には合わないかもしれませんけど。」
そう言った女は申し訳無さそうに微笑んだ。
「いや。
戴くとしよう。」
特に空腹であった訳では無いが、俺は椀を手に取り躊躇無く啜る。
悪天候の中を歩いた所為か、自分で思っていたより身体が冷えていたようだ。
温かい五分粥がじんわりと身体に染み込んでいく。
傍らに腰を下ろした女はそんな俺の姿を安心した様に見つめていた。