第7章 Phantom pain~幻肢痛~【薄桜鬼】
目を覚ました。
先ず目に入ったのは見覚えの無い天井。
それから辺りの状況を確認してみる。
到底家屋とは呼べぬ納屋の様な建物。
其処に敷かれた無いよりはまし程度の薄い布団に横たわる自分。
そして漸く己の有り様を思い出した。
「ああ……」
新政府軍の侵攻を追い掛け会津に向かう途中の山越えで、折からの悪天候に阻まれ滑落したのだったな。
其処で意識を失い、この場所に運ばれたという訳か。
問題は誰が俺を此所に運んだか…だ。
同行していた天霧では無いだろう。
天霧ならば俺をこんな風に『人間扱い』はしない。
取り敢えず起き上がろうとした俺は左足首の痛みに顔を顰める。
滑落した時に傷めたか?
この具合だと骨が折れているかもしれんな。
だが、まあ良い。
半日もすれば元に戻るだろう。
その頃には俺を探し出した天霧が姿を現す事も容易に想像出来る。
そんな事を考えながら小さく息を吐いた時、がたがたと安普請な音を発てて建物の入口が開いた。