第10章 ボクゥ、キミ苦手やねん。/弱虫ペダル、御堂筋翔
「そらこんな派手に転んだら痛いわ。けどボクはこういうの慣れとるから…」
「慣れると痛くないのか」
「…痛いは痛いわ。ボクそう言うたで?人の話を聞けや、キミィ」
「慣れても痛いなら助けて貰うことに不都合はないでしょう」
「ボクの助けになりたいなら、黙って消えてくれん?」
「助けになりたいのではなく、痛そうなあなたを助けたくてここに居るのです。送りますよ、バス停まで」
「屁理屈付きの恩返しなんか要らん」
「お礼参りならよいか」
「プッ。ボクはキミにそこまで恨まれとんのか」
「まさか。お礼に参りたいだけ」
「…キミなぁ。もっと真面目にちゃんと日本語勉強した方がええで…。生兵法は怪我の元やぁ」
「ミドースジくんは生兵法した訳ですね?」
「…もうええ。わかった。キミを何とかしようとしてもボクが疲れるだけや」
「可哀想に」
「…こんだけ意志疎通の難しい人間に会うたのは初めてやわ…」
「大丈夫。諦めなければいつかわかり会えるさ」
「キミホンマ黙りよ。崖から放り投げるで」
「それは肩を治してからにしましょう。掴まって下さい」
「キミじゃボクにはちっちゃ過ぎて反ってしんどいわ」
「この場合"私が小さい"のではなく、あなたが"大き過ぎる"のが正解でしょう。ミドースジくんは育ち過ぎました」
「余計なお世話や」
「掴まるのがしんどいのならバス停まで自転車を引かせて下さい」
「バス停までぇ?ボク、バスには乗らんよ」
「何ですと?」
「自転車担いでバスに乗れんやろ。引いて帰るんや」
「歩くの?」
「別に走っても構わんでぇ。キミがそうしたいんやったら。ボクは走らんけど」
「ミドースジくんの家は走って帰れるくらい近所か?」
「生憎やけどなぁ。町ッ子なんやわ、ボクゥ」
「…それは全く生憎なことです…」
「せやからキミはバスで帰り。願ったり叶ったりや」
「いいえ!私これでもヤマトナデシコの端くれ。武士に二言はなかりません!」
「キミはそんな大層なもんやないやろ。ただの変な女子高生や」
「"ただの""変な"と言っては"ただの"の意味が死にませんか。微妙です」
「なんやキミィ、意外に細かいなぁ。ほんなら変なだけで別に何も特別なことない、"ただの"女子高生でええか?あとキモい」