第9章 夕暮れ春風帰り道 /弱虫ペダル、御堂筋翔
「え?今の話題は気遣いだった?」
「…別にィ」
「あー!ロードレースとイタリア帰り、共通の話題をあなたなりに模索してくれたと、そういう話ですね?そうか!よしわかった!マリア・ローザ大好き!」
「そういうのは気遣いと違うで?無神経なコォやな、キミィ」
「そうですか。ごめんなさい」
「何で謝るん。何やボクが悪いこと言うたみたいやないか。やめて」
「そう?なら、無神経とは失礼な。で、いいかな」
「…キミィ、ホンマにアホやな」
「キモやらアホやら、あなたはあまり口がよろしくないようです」
「歯には自信あんで?」
「歯の話なんかしとらん」
「急に訛んなや。キモォ」
「本当にキモが好きだねぇ」
「キミと話しとると最後には頭が割れる気ィがする」
「脳味噌が脱皮しそうになるという話ですか?」
「アホ」
「また言われた。やっぱり手遅れだ」
「ほぉや。手遅れぇ。残念でしたぁ。ホラ、バス停や。こっからは送らんで」
「練習を中断してご親切に送ってくれてありがとうございました。これで擦り傷と、ネン、ネンザ?ドボク?ダボ…ドボ…ドダ…あれ?」
「…捻挫と打撲て言いたいん?」
「そうそれ!ネンザとドボクはチャラにしてやる」
「…キミは日本語もチンチクリンやなァ…」
「発展途上ですからね」
「だから何でそうチグハグなんや」
「発展途上だって言ってるじゃないか。先物買いの目で見て下さいよ」
「キミそれ、先物買いの使い方全然違うとるで。何で小豆相場の話になるんや。多分キミなぁ、言いたいこととまるきり違うこと言うとるわ。気ィつけや」
「アズキソウバ?」
「うち帰って先物買いの意味調べてみぃ。トンチンカンで死にたなるで」
「トンチンカン?…これまたあまり嬉しくない響き…」
「キミは死にたなったりしなさそうやな」
「しませんでしょう」
「はぁ。何やエラい疲れたわ。とんだ災難や」
「それは私の台詞だね」
「足ィおかしなったら言うてや」
「大丈夫」
「悪化したとか言うて後からボクに迷惑かけるような真似はくれぐれもせんでよ」
「了解」
「ほんで用がないならもう絶対話しかけんといて。今日はボクゥ、機嫌が良かったからよう話したったけど、言うたら基本キミと関わるの厭やから」
「望むところだ」
「調子ええなぁ。ホンマにわかっとるん?」