第1章 あったかいんだから/一松
ヒヨは、ホントに同じ学校の同級生だった。
何で思い付かなかったのかな。
卒業アルバムを見ながら一松はぼうっとしていた。
確かにヒヨが写ってる。今よりずっと幼くて頼りなさそうなヒヨ。
今にも逃げ出しそうな様子のカメラ目線。
何かコイツ、ちょっと僕っぽい・・・・
幼いヒヨをマジマジと見、一松はパンッとアルバムを閉じた。
階段を昇ってくる音がする。誰か来た。
慌ててアルバムを座布団の下に隠すと、膝を抱えてその上に座り込む。
「ただいま~。あれェ、皆は?」
十四松がひょこと顔を出した。
「・・・何だ十四松・・・」
肩の力をフと抜いて、一松は座り直した。
「また野球?」
「うーん。公園でね・・・」
一松の丸まった背中がビョッと伸びた。
十四松は一瞬目をパチクリさせて一松を見やったが、首を傾げて話を続けた。
「公園でねえ、ヒヨちゃんに会ったよ」
「・・・知り合い?」
いつになく素早い反応を返した一松に、十四松はまた目をパチクリさせる。
「知り合いって、ずっと同じ学校だったでしょ、あのコ」
「お前、覚えてんの?」
「覚えてるよお。ちょっと可愛かったもん、ヒヨちゃん。いつもニコニコしててさ」
「・・・いじめられてたんだろ?」
「へえ。そうなの?だからあんま学校来なかったのかぁ。でもさ、ニコニコしてたよね、ヒヨちゃん」
「知らない。俺覚えてないから」
「ふーん?」
十四松はちょっと不思議そうに一松を見たが、何も言わずに上着を脱いだ。
「・・・何か話したの?」
「え?」
「だからさ。・・・その、太田と何か話した訳?」
「うううん。話してない。話しかけてもニコニコするだけで答えてくんないしさ。ネコ構うのに忙しそうだったよぉ?」
あのうるさいヒヨが?
「ネコと一緒にねえ、ひなたぼっこしてるみたいだった。だから邪魔しないように帰って来たんだぁ。一松にいさん、ヒヨちゃんと仲良いの?」
「・・・・良かないよ。何言ってんの」
「そう?」
母さんに片付かないと怒られながら未だ居座る炬燵に潜り込んで、十四松は幸せそうな顔をする。
「何か気にしてるみたいだからさぁ。友達じゃないの?」