第1章 あったかいんだから/一松
「・・・友達?違うよ。そんなん要らないの、俺は」
「じゃ彼女?わあ、スゴいね一松にいさん、彼女出来たの?」
「・・・あのさ。俺なんかに彼女が出来る訳ないじゃん」
「違うの?なぁんだ」
尻がもぞもぞして来た。
「・・・・・出かけて来る」
「どこ行くの?」
「どこだっていいだろ。行って来る」
「気を付けてねえ。行ってらっしゃーい」
「・・・うん」
何故か十四松には強く出れない。弟バカなんだ、俺は。
何かムカつく。一人で色々気にしてバカらしい。どうだっていいんだよ。どうせ居なくなっちゃうんだろ?独りぼっちになるんだろ?
なのに足は公園に向かう。
いじめられっ子で不登校児でプーでニートで変な笑い方で、ちっちゃい可愛い変なヤツが、もしかしたら、ひょっとして、俺を待ってるかも知れない。
何で俺に構うんだ?
何で俺は構うんだ?
お互い破れ鍋に綴じ蓋の笑えない組み合わせだよ、ニート同士だし。仲良くしたって生産性ゼロじゃん。
・・・でもいいよ。ひなたぼっこくらい付き合っても・・・・
今だけだろ?そのうち俺にガッカリしてどっか行っちゃうんだろ?
だってアイツ、何で俺なのか言わないじゃん。他の五人の誰かと間違えてんじゃないの?
あ、心臓痛い。今のなし。
にゃはにゃは言ってばっかで訳わかんないんだよ、バカじゃないの、アイツ。
ホントのバカは俺の方だけど。
ヤバいヤバいヤバい。
嫌いだ、あんなヤツ。
ちくしょう。腹立つ。
・・・あったかかったんだよ。柔らかかったし、気持ち良かったし・・・オレだって男・・・なんだよ、くそ!
公園が見えて来た。
フワッフワの頭が見える。バターとハチミツ。今日も魚臭いのか?変なヤツ。ネコがいっぱいいる。
裏切られて寂しくなって死んだっていいか。いいな。別に。元々それでいいんだし。
振り返って笑う顔が今日も可愛い。あの頬っぺた、柔らかそうの美味しそう・・・・・
・・・何考えてんの、俺は。ホント死んでもいいですか?
伸ばされた柔らかい手。昨日あんな事したのに何笑ってんの。バカだよアンタ。
魚じゃなくて日向の匂いがする。
独りも、独りじゃなくなるのもイヤだ。
だから、 柔らかい手を握るのがおっかない。おっかないけど。
いいよ、もう。あったかいんだから。