第8章 麗しのハンナ/ハイキュー、天童覚
そんなん口が裂けても伝えないし、多分そうそう帰っちゃ来ないの、あの人!何呑気なこと言っちゃってんのヨ!旅行か何かでドイツに行くってんなら、俺がこんな焦ることないっしょ!?
そうだったらどんなに良かったか知れない。
お帰りって出迎えて、またコンビニに入り浸って、今度は俺が誘って一緒にご飯食べて、ドイツの土産話聞いて、ハナさんの絵付けした食器を見せて貰って、素敵だネって言う。手を握って、目を見て、好きって言う。
大好きだって言う。
目がじんわり熱くなって来た。
走る視界を流れてく小雨で洗われた色の濃い景色が滲んでぼやける。アスファルトの匂いがして、ますます目が熱くなった。鼻がツンと痛む。袖口で目元を振り払ったら、涙が飛んだ。
「…あ……」
…あれ…?俺、泣いちゃってんじゃん。うわ、マジで?何で泣くのよ、男の子デショ!?
…男の子だから?だから何?
男の子だって泣いていんだよ。泣きたいときゃ泣いちゃっていーんだよ。涙は心の汗だから幾らかいても汗臭くなんねーし!今のうちかいとけかいとけ!山ほどかいとけ、どんどんかいとけ!渇れるまでかいとけ!
その分サ、あの人の前じゃ笑ってたいから。きっと笑って送り出したいから。さ。