第8章 麗しのハンナ/ハイキュー、天童覚
騎士道ってこんなんかなー。
違う?違うってんでもいんだけどネ。だってどう言われたって俺はそう思うし。
私利私欲より優しさとか無私の精神デショ?
……あれ。何か違う。こう言うといきなり詰まんなくなっちゃわない?俺が言いたいのはそういうコトじゃなくて…。
「ありがとう」
俺が渡したナプキン受け取って、手を拭く桜庭さんが凄い可愛い。
大人の女の人で、ちゃんと仕事してて、自分のしたいことがキチンと見えてるしっかりした人なのに、桜庭さんは俺の目に映ると可愛くなっちゃうんだよ。
不思議だネ。
桜庭さんと、ご飯食べながらいっぱい話した。
ドイツの事、バレーの事、陶器の事、チームの事、絵付けの事、学校の事。
桜庭さんの笑顔は小さく笑えば掠れてハスキーだけど、大きく笑うと花が咲いたみたいだった。
カトラリーを、グラスを扱う指。ナプキンが引っかかりそうに荒れた手。顎から長い首にかけてのシンプルで綺麗な線。飾り気ない首元に浮く鎖骨。
意外と面白がりやでよく笑う目。
穏やかな低い声。楽しそうな笑い声。
お腹がいっぱいなのにまだ食べたいときってない?
あとサ、お腹ペッコペコなのに何も食べたくないときとかサ。
どっちも一緒に来た感じ。
何だろ、これ、ホラ、何て言うの?えーと、ほらァ…あれ?何つったっけ、若利くん?
……いや、間違った。間違ったヨ。若利くんいないからネ、ここに。いたら邪魔だし。スッゲー邪魔だし。何なら羊羹渡して断固お引き取り願うし。
羊羹を賄賂に使うつもりかって、いやいやいや。…うん、まあ今の俺なら全然やるネ。アリだね。何なら高い高い、俺的にはスゲー高いセレブな一品、岩谷堂羊羹奢っちゃう。
あ、考えたね、若利くん。揺れてるネ、若利くん。
考え込んでた脳内若利くんが顔を上げた。
天童。お前は今、胸がいっぱいなんだろう。
速攻という速攻がしっかり決まって文句なく快勝した試合の後そんな風にならないか?
俺はならなくもないな。
ならなくもないだけでしっかり飯は食うが。
お前、試合もしていないのに一体どうした?
「…どうしたって…」
好きになっちゃったんだヨ、桜庭さんを。
胸がいっぱいなんだな?
「…あ…そう…?ナルホドね…」
しかし若利くんが胸いっぱいになるなんて、あんの、ンなコト?またまた。
「天童くん?」
「ぅわ、はいィ!」