第8章 麗しのハンナ/ハイキュー、天童覚
チラッと見たら、まだ笑ってる。それ、どういう笑顔なの?そんだけ元気ならガッコ行けはナシで頼むヨ、桜庭さーん。
「好き嫌いはない?あっても付き合って貰うけど」
あったかい雨の中で、桜庭さんが笑った横顔を見せながら歩き出す。
あ、セーフ。良かったー、そこまでアタマ固くないんだネ。嬉しいナ。
渋柿色の彼女の傘と、俺の紺鼠色の傘。高い位置で並ぶこの二色の傘は、ぱっと見恋人同士に見えたりするかな。
くすぐったいネー。うずうずするヨ。
雨で良かったナ。傘持ってるから、荷物があるから。手を繋ぎたいの、我慢し易い。理由があるって、凄いよネ。ないよりずっと何でもわかり易くなるもんネ。
でもって、俺が桜庭さんを好きなのって、理由がない。言い訳みたいな理由ならなんぼでも付くけど、それって今だから言える訳でサ。これぞまさにTHE言い訳。
コンビニの、美人でもない筈のおばちゃんが気になって仕方なかった俺の理由は、俺にも見付けられない。
だから大変なんだヨ。困ったネ。