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お日様が照れば雨も降る。

第7章 減らず口/干柿鬼鮫


「?何がです?」

「何故こうもスカスカなんだろうと思いましてね。実に寂しい事ですよ」

「……へえ。貴方が寂しがるとは余程の事なんでしょう。私をジロジロ眺めて言われたところを見ると原因は私にあるようですねえ。お力になれれば何よりですが多分無理めな事でしょう。でなきゃ寂しがる必要なんかありませんものねえ?全く申し訳ない。よくわからないですが、謝っておきますよ。ええ。本当にすいませんねえ。何だか知らないけど」

必要以上に申し訳なさげな顔をして、そのくせ女はへっと鼻を鳴らした。肩をすくめて本棚から本を抜き出す。

「何を考えてるのか知れませんが、絵に描いた餅は食えませんのでね。相応の愉しみは相応に得て下さい」

手にした本をバンと閉じ、真顔で鬼鮫を見る。

「餅が食いたきゃ餅屋に行け。でなきゃ手掛けて餅をつけ」

「成る程。実に意味深い言葉ですね」

「でしょう?単純なだけに至言です」

墓穴を掘ったらしい事にも気付かず女は鹿爪らしく手にした本に見入っている。

「まあ要は、餅は餅屋と、そういう…」

「手前味噌でも餅はつけると、そういう話ですね」

「…はい?」

「貧相な餅でも手を掛ければ相応になると、そういう事でしょう?」

「誰かそんな事言いました?貧相な餅?何かしらカチンと来るフレーズですねえ…」

「揉むと大きくなるという俗説もありますね?」

「揉んで嵩が増える餅なんかありませんよ。どこの日本昔話ですか、それは」

「餅の話じゃありませんよ」

「じゃ何の話ですか、急に」

「誰が餅の話だと言いました?」

「ずっと餅の話をしてりゃ餅だと思いますよ、普通に」

「成る程。そうですか。では遠回しでなく言いましょうか。あなたの体は何故そう貧相なんです?」

「……喧嘩売ってんですか?多少高くても買いますよ?」

「喧嘩なんか売ってませんよ。思った事を正直に言っただけです」

「正直ならいいってもんじゃありません」

「そうですかね」

「…なら私も言わせて貰いますけどね。貴方はアレですか、肺呼吸とエラ呼吸、ぶっちゃけどっちが楽でらっしゃいます?正直使い分けてらっしゃるんでしょう?見た目通りの半魚人らしく」

「…何の話です」

「正直な話です」

「ほう…あなたは私を半魚人だと?」

「正直のランクを上げたらば、半は消えますね。人も失せますよ」

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