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お日様が照れば雨も降る。

第5章 送り梅雨/ハイキュー、青根高伸


本人は誉めている気か知らないが、センスのないチームメイトの一言に文字通りグラッと目が回った。

お握りマン・・・?俺はいつからアンパンマンの仲間になってしまったんだ?・・・・・いや、いいのか?正義の味方なんだから、いいんじゃないのか?
・・・・・・・お握りマン・・・・・・
駄目だ!やっぱり駄目だ!無理だ!自分を騙せない!

「あのお握り、青根くんが握ってたの?」

太田さんを見る勇気がない。お握りマンは顔が潰れて力が出ないのだ。恥ずかしい。

「・・・・お腹すいちゃったな」

「え?」

茶化すでも取り繕うでもない、言葉通りの気持ちの乗った声が、青根の顔を前に向けた。

太田さんと目が合う。

途端に太田さんのお腹が鳴った。太田さんがびっくりしてお腹に手を当てる。

可愛い・・・・

側に誰も居なければ壁に手をついて俯きながら叫んでいたところ。

可愛い!

おかしい。こんなに可愛いなんて、おかしい。人を好きになるってこんな感じなのか?皆こうなるものなのか?俺がおかしいだけなんだろうか。
誰にも聞けない。他は知らない。だから、綺麗でちょっとガサツで、元気な食いしん坊なこの人をただ可愛く思うだけ。

太田さんが、お腹を押さえながら青根を上目遣いに見る。青根は見惚れるようにその桃の種みたいな形の綺麗な目を見返した。

「・・・・・・・・」

「・・・・・・・・」

「聞こえた?」

「・・・・・・・ちょっと・・・」

「ちょっとって言うか、聞こえたんだ?」

「・・・・・・・うん」

目の前で太田さんがみるみる赤くなった。

え?何で?

ビックリした青根は、思わず一歩出て、そこでジーッとこっちを見ている三人に気が付いた。

二口がニヤニヤしている。小原が不思議そうに青根を見ている。南部さんはビックリ顔だ。

あ、駄目だ。

不意に青根は太田さんの手をぐいと握って歩き出した。しんなり手触りのいい手が、青根の大きな手の中にすっぽり収まる。太田さんはどんな顔をしてるだろう。 今は見れない。まだ赤いままかも知れないから。

「あ、おいコラ青根!いいとこで逃げんなぅぶッ、ちょ、何すんだよ!」

二口の声が途中でぶれたのは、小原が突っ込みを入れたからか。

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