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お日様が照れば雨も降る。

第4章 花菖蒲のようなヒト/ハイキュー、青根高伸


図書館で試験対策、いい考えだと思う。
うちで勉強してもいいけど、二口や小原と一緒の方が楽しい。

「楽しくてどうすんの。勉強だよ、勉強」

図書館前大きな銀杏を見上げながら、二口が呆れ声を出す。

「楽しくて何が悪いの。凄いじゃん、青根」

二口の呆れ声に小原が呆れる。

「じゃ小原はどうなのよ?楽しい?ベンキョ?」

言いながら、二口が一歩後ろに下がった。

「俺は部活やってる方が楽しいけど、な!」

グン、と、踏み切った二口の身体が高く跳ね上がる。気持ちよく伸びた腕が、上の上に繁る銀杏の枝を払った。青い若葉がワサワサと揺れて、二口は楽しそうに着地した。

フワッと朝のことが思い出される。

授業中、窓の外を見ながら何回も思い起こした太田さんの姿。薄墨色の制服の、背中がしゃんと伸びた綺麗な女の子。

銀杏木を見上げながら物思いに耽っていると、背後から会話が聞こえてきた。

「お腹空いたねえ、ね。図書館やめて、何か食べに行こ?」

「お腹は空いたけど、お金払って何か食べる気分じゃないなあ。んー、図書館なしなら潔く帰ろうか」

「まった太田のケチンボが始まったよ。いいじゃん、ファミレスかマック行こうよぉ」

何となしに耳へ流れ込んできた会話に紛れた名前に、青根はグバッと振り返った。

「・・・・あ・・・」

思わず声が出た。

「あれ?」

太田さんの桃の種みたいな形をした真黒い目が、青根を捉えた。

胸がギュッとなった。痛くないけど、痛いような。うん、痛くはない。けど、息が苦しくなった。吸いづらいし、吐きづらい。
自分が金魚になったような気がして、青根は赤面した。

「今朝はゴメンね?頭、大丈夫だったかな・・・」

キョトンとする友達と目を見張っている二口、小原を尻目に、太田さんは青根の前に立ってその頭に手を載せた。

「・・・・・・・」

指の細い器用そうな手が、青根のツンツンした髪に触れて、その下の地肌を探るように動く。

「コブにはなんなかったみたいだね?良かった良かった。でもゴメン。痛かったでしょ」

言いながら太田さんは朗らかに笑った。

可愛い。

朝は気づかなかったけど、笑うと左の頬っぺたにエクボが出来る。











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