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お日様が照れば雨も降る。

第4章 花菖蒲のようなヒト/ハイキュー、青根高伸


薄墨色のシュッとしたシンプルな制服は、女子にしては随分背の高いあのコによく似合っていた。

この時期になると青根のおばあちゃんのうちの庭に咲く花菖蒲みたいな女の子だ。





朝は早めに登校する。

ピーク時にぶつかると、周りの人が青根に席を譲るから気が引ける。青根の体が大きいのを気遣ってか、誰も近くに来ないのだ。青根は窮屈なのも一向に平気だし、立っているのも苦ではないのに、何故かひとり、混みあった車内でのんびり座って通学する事になってしまう。

もしかしたら、皆青根を怖がって近寄って来ないのかも知れない。

「・・・・・・・・」

そう思うと腹が痛くなるから、考えなくてすむように、空いた時間に登校する。

電車を降りたらしばらく歩く。
街路樹や道端の花が雨上がりの露をかぶって濡れている。気持ちいい朝だ。

背の高い青根は、剪定された街路樹によく頭を払われる。市や市に委託された業者の想定の上を行く長身なのだな、自分は、と、そのたび素直に思う。

今日も頭を払われて、どっさり露をかぶった。風呂上がりみたいなずぶ濡れの頭で歩いていたら、太田さんがいた。

初めに目に入ったのは、靭やかな筋肉が収縮するふくらはぎだった。

太田さんは、高く跳び上がって街路樹の枝を払っていた。
バラバラ降りかかる露に時折笑い声を上げながら、通りかかる街路樹全てを震わせて楽しげな太田さんのふくらはぎは、背の高い青根の目に映るほど高い位置まで跳び上がっていた事になる。

凄いものを見たと思った。

朝からビックリするなんて、何だか楽しい日になりそうだとも思った。高く跳ぶ太田さんの姿にワクワクした。跳ぶたびに跳ねるひとつ結びの素っ気ない髪を、可愛いと思った。笑う声が楽しそう過ぎて羨ましくなった。

そんなこんなで距離感がおかしくなった。

つまり、気付いたときには近づきすぎていた。

太田さんのカバンが青根の頭を直撃して、星が飛んだ。チカチカした視界に殴り書きのネームプレートとビックリして振り返った太田さんの顔が映り込む。

今日の青根はいつもみたいに平凡なスタートを切り損ねた。

でも、全然厭じゃない。何だかドキドキした。











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