第2章 南風はどこだろう/ムーミンパパ
「黙っていても南風は吹くよ。でも吹かれた自分が何を感じるかは自分次第じゃないかな?いつだってワクワクさせてくれるものは、自分で探さないといかんよ?準備がないのにどうしてワクワク出来るものかな」
コツコツとヘムレンさんがオニタビラコの鉢を指先で突ついた。
「コイツだって、今ロゼットをはって準備してるから、南風の頃には背丈を伸ばしてそよぐ事が出来るんだ。パパ、そんな様子にわしはワクワクするよ?それは、コイツからもわしに南風が吹いてるって事になるんじゃないかな」
瞼が溶けそうに眠くなって来た。
もうちょっとで何かに手が届きそうな気がするのに、こんなに眠いなんてあんまりだ。
このまま眠って春になったら、また一人で悩まなくちゃならないじゃないか。
冬眠の邪魔をするくらいひどい苦悩を春に味わうなんて・・・・・
いやしかし、旨いニシンだった。今頃のニシンは最高だな。こんなに冷たいリンゴ酒もなかなか呑めるもんじゃない。それに暖炉の有り難さ。居心地の良さに暖炉がこんなに関係あるなんて知らなかったよ。
ロゼット。身を縮めてるくせに何て元気なんだ。味の濃いギュッとした緑。地味に見えて華々しく濃い味の緑だ。
私はあんな緑がいいな。うん。あんな感じがいい。
冬に目を覚ますのもたまには悪くないかな。いつもいつもじゃ困りものだがね
シルクハットをあの緑にしたら、ママは何て言うかな・・・・・