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お日様が照れば雨も降る。

第2章 南風はどこだろう/ムーミンパパ


「やれやれ、何で私だけ目を覚ましちゃったのかな」

ブツブツぼやいたパパの腹の虫がぐうぅっと鳴く。

「・・・・仕方ない。台所に行くか・・・」

幸せそうに眠っているママに未練がましくかまって欲しそうな目をくれてから、パパはベットサイドのシルクハットを手に取ってそぅっと部屋のドアを開けた。

「おぅ・・・・・」

部屋の外は一段と寒い。また全身にヒリヒリと震えが走った。

「おっと・・・」

後ろでママが身じろぎして小さく唸ったのを振り返り、パパはしぃっと口に指を当てて静かにドアを閉めた。

シンとして痛い冬の空気が見慣れた家を占領して、まるでよそのうちに来たようなモゾモゾした居心地の悪さを感じる。

「やっぱり冬は寝ているに限るなあ・・・」

ぼやいてパパは、しまった!と、額を叩いて情けない顔をした。

「蝋燭を持ってくれば良かった。この調子じゃ一階はもっと暗いぞ。参ったなあ」

言いながら、三階に通じる階段を見る。
あの階段の先にはムーミントロールが眠っている部屋がある。

「・・・まさか起きちゃいないだろうが・・・・ちょっと蝋燭を借りるくらい、悪くないよな?」

内心ちょっと期待してキシキシ階段を上がると、意外な事に三階は白々と明るい月明りに満ちていた。

「ほうほう」

パパは一瞬寒いのも忘れて静かな光に照らされた我が家の三階を感嘆の目で眺めた。青みがかった白い明かりと、こちらも不思議に青みがかった黒い影のコントラストが息を呑む程鮮やかだ。

「これは凄い。大理石の御殿みたいじゃないか。これが我が家とは贅沢な事だなあ・・・」

これは冬でなければ見れない色だな。寂しくて厳しいからこんなにはっきり綺麗なんだ。

神妙な面持ちで窓から外を眺めると、家は二階まですっぽり雪に埋まっていた。

パパは目を真ん丸にして首を振った。

「だろうと思ったんだ。しかし凄いな。雪ばっかりだ」

遠くおさみし山の右肩に小さくて物凄く白々とした月が浮かんで、雪の地平を照らすだけ照らしている。

「いやいやお見事。まるで知らない国に来たみたいだよ」

苦笑いした拍子に、うとうとと半分夢の中で交わした問答を思い出した。

僕は色んなものを見たいし、知りたいんだ。
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