第3章 ふたつめ。
その後、名無ちゃんと同居出来るなんて実感が沸かないながらにも時間は進んだ。
水色のキャリーケースひとつ、名無ちゃんがそれを支えにするように立つ。
まだ歩く事自体に慣れていない事が解りやすいくらいにフラフラしている。
くっ・・・産まれたての仔羊のようだ・・・。
十四松「わわっ、大丈夫?大丈夫っ!?」
『ぇ、へへ・・・だい、じょぶ。
まだ・・・なれないなぁ』
カラ松「どうしても歩くのが辛かったら、オレが手を貸すぜ名無ちゃん」
『からまつ、くん・・・。
・・・ありがと、でも・・・・・・じぶんのあしで、あるきたいんだ。
だから・・・・・・だいじょうぶ。
・・・やさしい、んだ・・・ね・・・』
ズキューン。
なんだ、なんだこれは。
運命の歯車だけではなく名無ちゃんにオレの鋼鉄のハートが射られてしまったぞ。
なんて事だ・・・。
いつもブラザー達から蔑ろ(ないがしろ)にされるオレ。
特に一松からは容赦ない。
そんなオレに、名無ちゃんは・・・名無ちゃんは・・・優しいと言ってくれた。
なんて事だ!
ビッグバンだ。
オレの鋼鉄の心臓が宇宙規模のビッグバンを起こしているぞ。
女神か?名無ちゃんは女神の化身なのか?
いや化身なんかじゃない・・・ヴィーナス?・・・マリア?・・・・・・エンジェル!!
そう、エンジェルだ。
オレに優しく微笑みかけてくれるそのスマイル。
オレを優しいと言ってくれたそのリップス。
完璧だ。完璧なる・・・パーフェクトエンジェル!!!
トド松「うっわ、なんかカラ松兄さんの心の声がダダ漏れなんだけど・・・なに、ビッグバンとか。イッタイねえ」
チョロ松「まあ、普段優しくされる事なんて無かった分久々に優しくされて嬉しいんじゃない?」
おそ松「あっちゃー、カラ松の奴あれ絶対落ちたぜ・・・。
一松も多分落ちただろうし・・・お兄ちゃんうかうかしてられねーわな」
十四松「おれ、荷物持つね!
行こっ名無ちゃん!」
『え・・・あ・・・・・・、うん・・・っ』
おそ、チョロ、トド「「・・・十四松ううううう・・・!!」」