第1章 さいしょ
デカパン「いやー、やっぱり時々は作らないとだめダスね。
すこーし目を離しただけで焦げちゃうダス」
聞いてもいないのに、博士が穏やかな表情で喋り始める。
今名前に出ていたイヤミは、自分と一緒に居た人だ。
そう。一緒に、居た。
今も、たまに来ては博士と同じくこうして喋っていく。
同じく。
心配そうな表情も、その優しそうな声音も。
同じ。
喋る。
喋って、喋るだけ。
自分は喋らない。
博士達が一方的に喋るだけ。
くだらない事から、どうでもいい事。
外は晴れだ。今日はいつだ。
でも、決まって最初の質問は。
体調はどうだ?
ああ、なるほど。
博士達に、自分が、シンパイされているんだ。
デカパン「あ、そう言えばイヤミがホームレスになったらしいダスよー」
いつから心配されているのか。
いつからこの場所に居て、いつからこの場所が当たり前になったのか。
目を開けて。
白を見て。
博士が来て。
たまにイヤミが来て。
何かを置いていって。
喋って。
喋って。
喋って。
デカパン「日が暮れると、星が出て真っ暗になるダスよ。
月も出て、建物だらけのこの町もちょっとは綺麗になるんダス」
喋って、喋って。
そして、帰る。
だけど、今日は違っていた。