第2章 ひとつめ。
side デカパン
チョロ松とトド松が研究所から帰っていく姿を見送って、ワスはいつも通りに料理を作る。
昨日はチャーハンを作った。
その前はカレー。
その前は肉じゃが。
その前は、ピラフ。
その、前は・・・・・・。
ああ・・・・・・これで何度目ダスかね。
もう覚えてないダスよね・・・名無。
名無に初めて会った時。
ちゃんと、笑ってたんダスよ。
キラキラしてて。ワスには天使に見えたんダス。
言葉は軽くしか交わせなかったダスけど、ニコニコして。その笑顔ひとつで戦争のひとつやふたつ、簡単に止められるんじゃないかと錯覚してしまうくらいの眩しさ。
声だってそう。どこまでも凛とした、言い過ぎかもしれないけど穢れを知らないような透き通った声。
ああ、あの子にはどんな輝かしい未来が待っているんだろう。って。
でも、次に会った時。
名無は笑ってなかった。
笑顔だけじゃない。
どんなに叱られても悲しまなかった。泣かなかった。
どんなに褒められても喜ばなかった。笑わなかった。
どんなに、理不尽な事を言われても・・・怒らなかった。
どんなに、声をかけられても・・・・・・。
名無は、もう。
ぽた・・・・・・
デカパン「・・・・・・っ!
・・・・・・だめ、ダスね・・・・・・料理・・・つく、らないと・・・・・・・・・っ。
待って、る・・・・・・の、に・・・・・・・・・っっ・・・!」
もう少し待って、名無。
もうすぐ、いつも通りに。
ワスが、名無に・・・名無の知らない事をたっくさん、分けてあげるダス。
だから・・・・・・もう少し、待ってて。