第1章 観察日記
帰り道。
エルヴィンと俺の間にはさっきの燕尾服のままの女。
俺の少し斜め後ろを俯いたまま歩いている。
「リヴァイ。2万だなんて、金はあるのか?」
「…貸してくれ。必ず返す。」
俺の財布事情を知っているエルヴィン。
「いや。冗談はやめよう。半分私も出す。」
必要ない。と突っぱねるつもりだったが、エルヴィンがなぜ俺をここへ連れてきたのか理由を話し始めた。
「この子は、もともとフェンベルグ家のお譲さんだったんだ。彼女の父親は実に優秀な人物でね…。彼が死んだあと、その顔に泥を塗るかのように、彼らは彼女を人形に仕立て上げた。しっかり世話をすると、彼女の父親を安心させてね。ピクシスも私も彼女を知っていたんだよ。」
彼女が競売にかけられるという噂、エルヴィンはいくら高くなろうとも彼女を買い戻すつもりだったらしい。
「買ったのはリヴァイ、君だ。彼女を救ってくれ。」
金の事はなんとかなった。
しかしだしかし。
俺はこの時、こいつが相当に面倒なものだなんて想像もできなかった。
これが、一昨日の話。
今日。エルヴィンからこのノートを渡され、出来る限り彼女の身に起こった出来事を書けと言われた。
きっとピクシスがいちいち話を聞かせろとせがむのだろう。
まぁ、こいつが一人で生きて行けるようになって、二度と同じ道を歩かないように。
俺はこのノートを記していくことにする。
・・・