第23章 二十三日目
早速エルヴィンの所へ連れて行ってみた。
「どうだ、リヴァイ。」
「まぁまぁだ。」
「ウリエ、巨人に興味があるそうじゃないか。巨人を知るのが楽しいか?」
ウリエはエルヴィンの質問に答えるべきか迷っていた。
俺からは「話しかけられたら返事をしろ」と言われている。
この状況がいつもの雰囲気とは違う事を理解していて、エルヴィンがいつも廊下ですれ違うような、部下共とは少し違う事を感じているのだろう。
不安げに俺に視線をよこすだけ。
エルヴィンは根気強くウリエの言葉を待つつもりのようだ。
だから俺もウリエの視線を無視し続けた。
「…はい。」
とうとうエルヴィンの視線に耐えかねて、小さく言葉を返した。
俺に怒られるのではないかと、こちらの様子を窺うのが鬱陶しい。
煩わしい。
「よくやったな、ウリエ。リヴァイ、褒めてやらないのか?」
「普通の人間なら普通に出来て当然のことだ。褒める必要が何処にある。」
……褒めた方が良かったのだろうか。
それからのこいつは少し拗ねているようにも不機嫌なようにも見えた。
俺の主観かもしれなかったが。
風呂に入って寝るまでの時間、いつものように本を読む。
しかし、ページをめくる手が何度も何度も止まっている。
本来なら主人に言いつけられた受け答えしかしてはいけないし、ましてや主人がいる目の前で他人と会話をするなんて言語道断。
今日はその言いつけをがんばって破って他人と会話したのだ、だから褒めてくれ。
とでも言いたげだな。
ちっ。
「ウリエ、今日はよくやったな。もう寝ろ。」
「はいっ。」
不機嫌だったウリエは子供のように唐突に機嫌を良くして、本を閉じ満足そうに布団に潜っていた。
……初心に戻れ。
今日のこいつの行動は喜ぶべき成長である。
それが、普通の人間らしい行動であるとウリエに教えるには時に褒めることも必要だ。
だから、俺は褒めたんだ。
寝る。
・・・