第180章 百八十日目
店に着くと、たくさんの種類がある馬具を一つ一つ丁寧に品定めしていく。
それはいいのだが、こいつは自分の持っている金とここにある商品の値段が釣り合っているかどうか何て考えていないのだろう。
ウリエの金じゃ、蹄鉄の一つも買えやしねぇよ。
「リヴァイさん。ジークリットは栗毛ですから、黄色みがかったほうがいいでしょうか?それとも、黒い方がいいでしょうか?」
ウリエが持ってきたのは二本の手綱。
どちらもアホみたいな値段がするものだ。
「お前がジークリットに似合うと思う物にしろ。悩め。」
そう言うと、うーん。と首を捻りながらまた店奥へと引っ込んで行く。
ウリエに物の値段と持ち金の話をするか迷った。
だが、買えないと気が付いた時のウリエの顔を想像すると、やりきれない。
俺も随分甘いな。
黙っておいて、いつかウリエに言ってやろう。
「おい、店主。」
「は、はい。」
「先に金を払っておく。釣りはいらん。あいつが金を出すと思うが、黙って受け取ってやってくれ。」
ウリエに聞こえないように、店主に幾枚かの金貨を渡しておく。
「こんなには…!」
「いい。黙って受け取れ。」
次に来た時、付けといた金で何か買えばいい。
ウリエの様子を見に行ってみれば、黒い手綱を手にして、次に無口の前で悩んでいた。
「手綱が黒なら、それも黒でいいだろうが。」
「ちょっとずつデザインが……」
そう言うとこは女だな。
馬の顔にかける無口を二つ手にして迷っている。
しばらく掛かってようやく一つに絞る。
この様子だと、夜までかかりそうだな。
決めた馬具はカウンターに置き、結局店主と相談しながらあれこれ決めていた。
一番迷ったのは鞍だ。
ちゃんとジークリットの背のサイズを測ってきており、店主と共に順調に選んでいるのだと思ったら、俺の前に三つの鞍を持ってきて、どれがいいでしょうか?だ。
「どれも好きなのです。リヴァイさんはどれがお好きですか?」
別に、鞍なんか乗れればいいだろうが。
「黒い、シンプルな奴でいい。真ん中のだ。」
「はい。では店主さんこれにします。」
ようやく馬具一式を決めて、すぐに団の厩舎に届けてもらうよう頼んだ。
結局店を出たのは昼をだいぶ過ぎてからだった。