第7章 -仕事とドジと喧嘩とあなた-(東峰/菅原/澤村)
すみれがニッコリ微笑むと、
旭もまた笑顔になる。
「あ…あの!檜原さん‼︎」
「…はい?」
すみれはコーヒーを飲みながら、
キョトンとして旭を見つめる。
「あの…すみません…さっき…
スガと話してるの聞こえちゃって。
彼氏さんと…喧嘩…したんですか?」
「あ……恥ずかしいコト…
聞かれちゃいましたね。」
すみれはパクンとクッキーを食べ、
誤魔化すように笑った。
「す…すみませんっ‼︎」
「やだ…謝らないでください。
ほんとにくだらないコトで…。
最初はわたしの仕事のコト、
相談してただけだったのが…
いつのまにか喧嘩になっちゃって。」
すみれは少しずつ旭に話し出した。
「わたし…凹みやすいというか、
基本的にネガティブで…。
彼はいつも励ましてくれるんですけど、
昨日はなぜか途中から、
話の方向が変わっちゃって…。
会社の先輩に言われたコト話したら…
おまえは隙がありすぎだとか、
電車とかでもボーッとしすぎだとか…。」
旭は静かにすみれの話を聞いていたが、
途中から不思議そうな顔をしていた。
「よくわからなくなっちゃったけど、
結局はわたしがネガティブすぎたから…
彼も呆れちゃったんでしょうね。」
すみれはそこまで話すと、
またコーヒーを一口飲む。
暫くお互い喋らなかったが、
沈黙を破ったのは旭だった。
「呆れたわけじゃないと思うよ。」
「え…?」
「檜原さんの彼のコトを
オレは知らないけど、
付き合ってて、
いつも励ましてくれてるのに、
それだけで呆れるかな?」
「それは…わたしがいつもいつもネガ…」
「檜原さん‼︎」
すみれのことばを遮り、
旭はコーヒーカップを持っていた
すみれの手をギュッと握り、
真剣な目ですみれを見つめる。
「オレも人のこと言えないけど‼︎
自分で自分のコト、
ネガティブだネガティブだって言ってると、
ほんとはポジティブかもしれないのに、
ほんとにネガティブになっちゃうんだ!
悪いコトばっか言ってると、
そのことば通りになっちゃうんだよ!
だから…‼︎」
カランカラン…
ドアの開く音がして、
旭のことばを遮るように
男が1人入ってきた。