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〜Cafe myosotis〜

第2章 -なにかひとつ-(澤村)


少しでも時間を稼ぎたくて、
いつもの本屋さんではなく、
電車に乗って、
少し大きめな本屋を
目指したすみれだったが、
本を買ってしまえば用事は終わる。


ならば、どこかのカフェで、
お茶でもしながら、
ゆっくり読めばいいじゃないか…


そう思って、
いくつかカフェをまわるが、
日曜日の昼間は、
どこも人で溢れていた。


友だち同士や恋人や家族と、
楽しそうに笑いあっている人たち…


皆知らない人だから関係ない…
誰もわたしを見てないから大丈夫…
そう思うのに、
すみれは1人疎外感を感じそうになる。


でも、それに気付かぬふりをして、
すみれは駅に戻った。


それでもなかなか
改札を通る気になれないすみれは、
いつもは行かない、駅の反対側に
足を進めてみることにした。


「住宅街…かぁ。」


自分の住む街よりも、
高級住宅街…という感じで、
1軒1軒の家が大きく、
駐車場には
高級車が停まっている家が多い。


知らない道を進むことが、
少し面白くなってきたすみれは、
気の向くままに歩くことにした。


「あれ…?」


ふとこの街には似つかない
小さな小道を見つける。


小道というか緑のトンネルだ…。
家と家の間の小道に、
蔦の葉が幾重にも絡み合い、
それがトンネルのように見えるのだ。


「この先は…行き止まりかな…?」


でも、自然にできたようにも見えない。
わずかながらに人が通れるよう、
蔦の葉は手入れをされている。


「行ってみよう!」


どうせ暇なんだし、
知らない街を歩いて、
冒険気分で少し興奮していたすみれは
緑のトンネルを恐る恐るくぐる。


「うわぁぁ…」


トンネルを抜けると、
先ほどまでとはまた違い、
色とりどりの花が咲き乱れる
キレイな庭があった。


「…って、これ…
もしかして人のおうち?
不法侵入じゃん…」


感動した直後に
一気に真っ青になるすみれ…
慌てて戻ろうとするが、
ふと小さな看板が目に入る。



”Cafe myosotis”



「カフェ…?」


よく見ると看板のすぐ下に、
ひっそりと隠れるように
周りと同化したドアがあった。


すみれは一瞬躊躇うが、
好奇心には勝てず、
吸い込まれるように
そのカフェに足を踏み入れた。

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