第6章 -ありがちだけど-(花巻/岩泉)*
そのあとはいったんカットしてから、
パーマをかける。
カラーもパーマも初体験のすみれは、
パーマの機械を外した姿を見た瞬間、
思わず絶句してしまった。
「ははっ。驚いた?」
すみれの髪はくるんくるんの
まるでサ○エさんのようになっていた。
「は…花巻さん〜っ‼︎」
「流せばちゃんとなるから♪
皆そうなんだよー。」
泣きそうな顔も可愛いなーなんて、
花巻は呑気に思いながら、
またシャンプー台へすみれを促す。
「悔しいけど…でもやっぱり、
花巻さんに髪洗ってもらうの…
気持ちいいです。」
着替えないでただ仰向けに寝るだけで、
髪をキレイに洗ってもらえる…
美容院に来た時だけの特権に、
すみれは素直に花巻を褒めた。
「そーんなこと言ってくれると、
オレ、調子乗っちゃうけど?」
「え…?」
……チュ。
「は…花巻さんっ⁈」
さっきのシャンプー台では
ガマンした花巻だったが、
今のすみれのことばで、
あっさりガマンの限界を越え、
花巻はすみれの頬にキスをした。
もちろんすみれは真っ赤だ。
「だってさっき岩泉のヤツ、
ほっぺにキスしてただろ?」
「えっ⁈あの…あっ…」
「ズルいじゃん。」
花巻はサラッと言うと、
すみれの身体を起こした。
「お目覚めかな?お姫さま♪
あとはブローして整えるだけだよ。」
「〜〜〜〜っ⁉︎」
声にならない声で抵抗するしかなかった
すみれだったが、
結局花巻のなすがままにされている。
それもそのはず…
心配していたサ○エさんヘアーが
みるみるうちに可愛らしくなっていくのだ。
花巻は微調整してカットしながら、
すみれに話しかける。
「前髪どうする?おろしとく?」
「う〜ん…あ!前髪は…じゃあ…!」
「えっ⁈いいの⁈」
「はい。」
「よっしゃ‼︎」
前髪のカットもして、
スタイリングもしっかりして…
「はい♪お姫さまの出来上がり♪
どう?気に入った?」
「わ…わたしじゃないみたい…」
「んじゃ、とりあえず岩泉しかいねーし、
あんま見せたくないけど、見せに行くか。」
花巻はすみれの手を取り、
カフェとサロンの間の扉を開けた。