第6章 -ありがちだけど-(花巻/岩泉)*
「あ…ごめんなさい。」
「なんですみれちゃんが謝るの?
謝ることないって。」
余計なコトを聞いてしまったと悔やむすみれの気持ちを察した花巻はすぐにフォローを入れる。
「そりゃ悔しかったけどね。
あん時はイロイロ後悔するコトもあったよ。
あん時こうしてれば…とかさ。
もっと練習してれば…とか…ね。
でも、あの時のオレらは団結してて…
あの時出せる力を全部出し切ったんだ。
誰1人手抜く奴なんかいなかった。
皆同じ気持ちで頑張ってきてたからこそ、
今もこうやって岩泉や他の奴らとも…
一緒にいるんだろうな。」
「花巻さん…」
「ま、何が言いたいのかっつーと…」
花巻は立ち上がり、
すみれの髪の様子を見る。
「今、後悔するコトがあってもね、
全部が全部悪かった嫌だった…
ってわけじゃないだろうし、
少なからずいいコトもあった…
かもしれねーじゃん?」
「…はい。」
すみれは小さく頷く。
「(花巻さん…もしかして…
励ましてくれてるのかな…)」
「だったら、
良かったコトは大事にして、
イヤだったコトは忘れて、
あとはすみれちゃんがキレイになって、
心機一転、すみれちゃんが
前向けばいいんじゃねーかな?」
「…っ‼︎」
ハッとしたすみれの表情を確認すると、
花巻は少し安心したように声を掛ける。
「んじゃ、いったん流すから、
またシャンプー台来てくれる?」
「…⁉︎つ…次は…キスは無しですよ‼︎」
「ははっ…どぉすっかな〜♪」
恥ずかしそうに言うすみれを見て、
花巻は笑いながらこたえた。
「も…もうっ‼︎」
そのままでいるわけのいかないすみれは
シャンプー台まで行き、
また花巻に髪を洗ってもらう。
「気持ちいい…」
「…♪もっと気持ちいいコトする?」
「は…花巻さんっ‼︎」
「ウソウソ…♪ほら、終わったよ。
(ちぇ〜っ。キスはしたいけど、
ガチで嫌われそうだし、今は我慢すっか。)」
今度はキスはせずに、
すみれを起こした花巻だった。