第6章 -ありがちだけど-(花巻/岩泉)*
まずはカラーからだった。
ペタペタと丁寧にすみれの髪に
カラー剤を塗っていく花巻…。
その花巻の姿を鏡越しに見ているすみれは、1人ドキドキしていた。
「(花巻さんの…腕…すごい…カッコイイ…)」
花巻は黒のダメージジーンズに
白のワイシャツというシンプルな服装だったが、
シャツの袖を肘まで捲り上げていて、
鍛え上げられた腕が見えていた。
丁寧にカラー剤を塗るたびに、
スッと伸びる腕の筋…
色白なのに力強そうな腕に
すみれはつい見惚れてしまっている。
「すみれちゃん?どうかした?」
「えっ⁈あ…いえ…」
花巻は鏡越しに、
固まってるすみれをジッと見つめた。
「もしかしてオレに見惚れてたりしてー♪?」
「えっ⁈あの…えっと…」
「…っ⁈(ドキッ…)マジで⁈」
「いえ…あの…ごめんなさいっ!」
図星のすみれは、
さっきよりも真っ赤になってしまう。
というより、この部屋に入ってから、
すみれはずっと真っ赤だった。
すると花巻は鏡越しではなく、
すみれの前に回り込み、
正面から顔を覗き込んだ。
「めっちゃ嬉しいけどな♪」
「…っ‼︎」
「んじゃ、ちょっとこのままね。」
花巻は手袋を外すと、
すみれの頭にラップを巻きつける。
時間を置いて、
カラー剤が浸透するのを待つためだ。
普通の美容院なら時間を置く間は、
美容師は別のお客さまを担当するが、
ココにいるお客さまはすみれ1人。
花巻はすみれの横に座り、
すみれに話し掛けた。
「オレさ、岩泉と高校同じだったのね。」
「え…?あ、だから、
あんなに仲良しなんですね。」
突然の話題にポカンとしながらも、
すみれは花巻の話に相槌を打つ。
「ん。まぁ、部活も同じで、
3年間ほぼ毎日一緒だったからなー。」
「何部だったんですか?」
「バレー部♪」
「強かったんですか?」
「強かったよ♪
オレらが3年の時が最強だったかなぁ。
全国行けるレベルのチームだったな。」
花巻は昔を懐かしむように話し出した。
「全国大会…行ったんですか?」
すみれの問いに花巻は小さく首を振る。
「ううん。」