第6章 -ありがちだけど-(花巻/岩泉)*
花巻はすみれの顔に
ふわりとガーゼを掛けた。
「苦しくない?」
「はい。大丈夫です。」
「んじゃ、始めるね。」
花巻のシャンプーは優しかった。
力強いのになぜか痛くない。
「かゆいトコロある?」
「大丈夫ですよ。」
「じゃ、流すね〜。」
「はい。」
「なんかさ〜」
「…?はい。」
シャンプーを流し終え、
すみれの髪を拭きながら、
花巻はすみれに話しかける。
「キスできそうだよねー♪」
「はっ⁈えっ⁈あの…っ⁈⁈」
慌てるすみれをよそに、
花巻はすみれの頭を支えながら、
起き上がらせ、ガーゼを取ってしまう。
「あ…っ。」
「くくっ…赤くなってんの♪
かーわいい♪」
「は…花巻さんっ‼︎」
「でもさ、こうやって起こす時って、
白雪姫とか眠り姫、
起こすみたいな感じじゃん?」
「えっ⁈」
すみれの顔は白雪姫が食べた
毒リンゴのように真っ赤だったが、
花巻はそんなことを
気にした様子はまったくない。
「キスしたくなるよね♪」
そう言って花巻は、
さらにすみれに顔を近づける。
「えっ⁈は…はなま…」
…チュ。
花巻は不敵に微笑みながら、
すみれのおでこにキスをした。
「あ、言っとくけど、
毎回お客さまに
キスするわけじゃないからな?」
花巻はまるで本当のお姫さまのように
すみれの手を取り、
椅子からすみれを立たせる。
「え…?」
「だってすみれちゃん、可愛いし♪
すみれちゃんだからしたんだよ?
”特効薬”は多いほうがいいっしょ?」
「えっ⁈」
ただただ真っ赤になるだけのすみれを
花巻は愛おしそうに眺めていた。
「さっ♪はじめますか?お姫さま♪」
鏡の前の席にすみれを座らせた花巻は、
先ほどとは違う雰囲気を纏いながら、
すみれの髪を撫でた。