第5章 -失恋特効薬-(岩泉/花巻)*
暫くして、泣くだけ泣いたすみれは、
涙を拭いながら顔をあげた。
「そのハンカチやるから。
涙拭いとけよ。」
「あ…すみません。
あの…洗ってお返しします。」
「あ⁈そんなんいいって。」
「でも…」
「いいから‼︎」
「…っん⁉︎」
店員はすみれの手から、
ハンカチを奪い取ると、
すみれの顔をガシガシ拭く。
「うわっ…痛いです‼︎あの…‼︎」
「あぁ。わりぃ。」
謝った店員だが、
すみれの顔の正面に
自分の顔を持っていき、ニッと笑った。
「スッキリしたみてぇだな!」
「…っ⁈あ…ありが…」
カランカラン…
「たっだいまー‼︎って、岩泉⁈
おまえ、なにやってんだよ⁈
お客さん…つぅか、
女のコ泣かしたのか⁈」
「花巻⁈ちげぇって。」
花巻と呼ばれた
ピンクブラウンの不思議な髪色の人は、
荷物をカウンターに置いて、
すみれの隣に座った。
「ごめんね。岩泉、顔は怖いけど、
ほんとはいい奴だから。
つか、ほんとこいつ何したの?」
ピンクブラウンの髪の人は、
スッとすみれの目元に手を伸ばし、
すみれの涙を拭う。
「…っ⁈」
「アホか‼︎
だから、なんもしてねぇよ‼︎」
「あ、あの、ほんとに違うんです!
わたしが失恋して勝手に泣いてただけで…」
すみれも慌てて否定する。
「失恋⁈…そか。
そりゃ、男のほうが見る目なかったな。」
花巻はすみれを見つめながら、
子どもをあやすように頭を撫でる。
「いた…っ…」
「あ!ごめん‼︎
せっかくキレイな髪なのに…」
花巻のワイシャツの袖口のボタンに
すみれのキレイな黒髪が絡まってしまった。