第3章 -逮捕すんぞ-(火神/氷室/青峰)
「そういう話はまず、
彼女と同じ目線になって…」
そう言った氷室は、
すみれの隣の椅子に座り、
ニッコリ微笑んですみれを見つめる。
「…‼︎おい⁉︎辰也っ!」
お酒ではなく、氷室に対して
赤くなっているすみれを見た火神は、
咄嗟にカウンターの中から叫ぶ。
「ね?名前は?」
「すみれ…です…」
氷室の妖艶な瞳に見つめられ、
素直に名前を告げてしまうすみれ…
「すみれちゃんか。
すみれちゃんはきっと
頑張りすぎなんだよ。」
ポンポン…
「…っ⁈」
氷室は子どもをあやすかのように
自然にすみれの頭に手をやる。
「少し肩の力を抜いてごらん。」
そして、そのまま
氷室がすみれの肩を撫でる。
「すみれちゃんは…」
バターンッ‼︎
「氷室ぉっ‼︎」
「「「…⁈」」」
扉を蹴破るかのような物凄い音に
3人が振り返ると、
制服を着ていなければ、
警察官とわからないような
人相の悪い色黒の男が入ってきた。
「青峰ぇっ‼︎
てめぇ、いつも言ってんだろうが‼︎
店壊す気か⁈」
「あ?そんなんじゃ壊れねぇよ!
そんなんで壊れんなら、
この店も終わりだなっ!」
「はぁ⁈」
完全に蚊帳の外のすみれは、
火神と青峰のやりとりを、
ポカンとしてただ見ているだけだった。
「…♪(すみれちゃん!)」
「…っ⁈」
ヒートアップしている2人を
クスクス笑いながら見ていた氷室は、
小声ですみれに声を掛ける。
「じゃ、オレは行くね。
すみれちゃん、
少し肩の力を抜くんだよ?
また何かあったら大我じゃなくて、
オレに相談しな…ね?」
…チュ。
「…っ⁈」
「元気が出るおまじない♪じゃあね。」
氷室はすみれの頬にキスを残し、
まだ騒いでる2人の横を堂々と通り、
店の正面から出て行ってしまった。
「てめぇに用はねぇんだよ!バ火神っ‼︎」
「はぁっ⁈
アホ峰の分際でえらっそぉに‼︎」
「あ…あのぉ…」
いっこうに終わりそうにない2人の会話に
すみれはついに口を挟む。
「「あんっ⁈」」
「氷室さん…行っちゃいましたよ?」
「「…っ⁈はぁぁ⁈」」