第3章 -逮捕すんぞ-(火神/氷室/青峰)
「あ?どうした?」
すみれの反応に、
火神はカウンターの中から、
すみれの皿を覗き込む。
「ピクルスが…減ってる気が…」
「…‼︎…ピクルスが?」
「どうかした?」
心当たりがあるのか、
”ピクルス”に反応する火神…
チョン…
「え…?」
「どうした?」
「あ…ううん。」
しかし、すみれは首を傾げる。
何かが膝に触れたのだ。
「ピクルスはもうやめとけ。
なんかもっと
腹に溜まるもんでも食うか?」
「あ…うん。」
「んじゃ、焼きそばでも食うか?」
そう言って、
火神はすみれに背を向け、
少し奥のコンロに火を付けた。
「ね?
ピクルス…おかわりほしいな。」
「…っ⁈きゃ…っっっっっ⁈」
「しぃっ♪大きな声は出さないで?
大我にバレちゃう…。」
突然足元から出てきた背の高い男…
しかも一瞬女かと見紛うような
美男子に口元を押さえられ、
すみれはパニックだった。
「…っ⁈んっ…‼︎んんっ‼︎」
すみれがうんうんと頷くと、
その美男子はそっとすみれの口元から
優しく手をはなした。
「驚かしちゃってごめんね。」
「…(な…なんなの、この人…⁈痴漢⁈
カウンターの下にいるなんて…‼︎
こんな美男子じゃなかったら、
おまわりさん呼んで即逮捕だよ…)」
なんとも現金なことを考えている
すみれだったが、
まさかそんな本音は言えず、
ただただポカンとして
その美男子を見つめるだけだった。
「オレは氷室辰也。辰也でいいよ。
大我…あ、あのマスターは
オレの弟みたいなもんなんだ。
でも、ちょっと今追われてて…」
「おい‼︎青海苔かけるか〜?」
「…⁉︎」
「しっ♪」
辰也はウインクをして、
またカウンターの下にそっと隠れる。
「ううん!いらないです!」
「はぁ…たく。
この青海苔がうまいっつぅのに。
ほら、食え。」
ブツブツ言いながらも、
火神はすみれの前に、
ほかほか湯気のたった焼きそばを置いた。
「美味しそう!」
すみれはふぅふぅ…としながら
焼きそばを口に運ぶ。
「美味しい!」
「当たり前だろ。」
そっけなく答えるが、
満更でもなさそうな火神。