第1章 君といたい
ある日、僕と有希ちゃんは二人で松本先生の医学所に出向いた。
定期的に松本先生の診察を受けるようにと、近藤さんと約束しているからだ。
「うん。顔色も良いし、胸の音も悪くない。」
一通り僕の身体を診た松本先生が満足気に言う。
「薬もちゃんと飲んでいるようだし……。
沖田君がこんなに素直に私の言う事を聞くなんて、
以前の君からは想像が着かんな。」
声を上げて笑った松本先生に
「有希ちゃんのお陰ですよ。
僕はもう、有希ちゃんと離れられないから。」
僕はあっけらかんと言ってやった。
「お……沖田さん。」
少し離れた場所に正座をしている有希ちゃんが、頬を紅く染めて困ったように僕を咎める。
「だって、本当の事だからね。
有希ちゃんもそうでしょ?」
「………っ」
何も言えずにもじもじと俯く有希ちゃんに、僕の頬もつい緩んでしまう。
そんな僕達の姿を見た松本先生は一層大きな声で笑ってから
「どうやら君が沖田君にとっての一番の薬のようだな。」
有希ちゃんを慈しむように見つめた。