第1章 君といたい
僕は今、有希ちゃんと二人で暮らしている。
労咳が悪化して録に刀を握れなくなった僕の療養の為にと近藤さんがこの庵を用意してくれた。
勿論、最期の時まで近藤さんの側で戦い続けたかった僕はその話を簡単には受け入れられなかったけれど、でも以前のように刀を振るえない事に自分自身が一番落胆していたし、近藤さんは待っているからと言ってくれた。
それに有希ちゃんが僕と一緒に来るって言ってくれたから、僕は屯所を離れる決心をしたんだ。
市中から少し離れたこの山里の庵に移ってからは咳き込む事もかなり少なくなった。
ここ最近は喀血も無い。
松本先生の進言通り、空気の綺麗な場所である事も理由なんだろうけど、何よりも甲斐甲斐しく僕の世話をしてくれる有希ちゃんの存在がとても大きいと思う。
大好きな有希ちゃんと二人で過ごす毎日は、ささくれ立っていた僕の心を穏やかに均していった。
もう僕は有希ちゃんが居ないと生きて行けないと思うまでになった。