第5章 100万回言うよ
そして僕はそっと有希ちゃんの肩を抱き寄せる。
「総介は良いと言ってくれたけど……有希ちゃんは?
これから先、僕と一緒に居てくれる?」
また僕を見上げた有希ちゃんの目にじわりと涙が滲み
「はい。」
頷いて僕の胸に頬を寄せた。
「もう、私を離さないで下さい……沖田さん。」
「もう離さないよ。……一生だ。」
僕の命を狙う奴等はもう居ない。
僕が逝った後、有希ちゃんが命を絶ってしまうかも…という不安も有希ちゃん自身が払拭してくれた。
……だって有希ちゃんの側には総介が来てくれたからね。
もう僕が君を手離さなければいけない理由なんて何一つ無いんだから……。
お互いを慈しむように身を寄せ合っていると
「父様ぁ!」
突然、総介の声が聞こえた。
自分が呼ばれているのだと一瞬遅れて気付いた僕が顔を上げると、総介がにこにこと笑いながら僕に向かって小さな手を振っている。
「見ていて欲しいんですよ。
自分の姿を……父様に。」
有希ちゃんの言葉と、まだ手を振り続ける総介の姿に熱い物が込み上げて来る。
僕もにっこりと笑って、総介に手を振り返した。
「あの子はきっと沖田さんと同じ……
強くて優しい子になります。
だから、ずっと見ていてあげて下さいね。」
そう言って有希ちゃんも微笑んだけれど、その目にはまだ涙が浮かんでいた。
「ねえ……有希ちゃん……」
「はい。」
「君も沖田になるんだから『沖田さん』って変じゃないかな?」
「…………え?」
「なってくれるでしょ、沖田に。」
有希ちゃんの頬を優しく撫でると、浮かんでいた涙がぽろりと溢れ落ちる。
「………はい、勿論。
嬉しいです……お……っ…」
「ん?」
僕が悪戯っぽく眉を寄せると、有希ちゃんは真っ赤になってからそっと呟いた。
「………総司さん。」
「うん、良いね。
僕も凄く嬉しいよ。」
溢した涙を拭うように、僕は有希ちゃんの頬に口付けた。