第2章 僕は何かを失いそうだ
………でも、その躊躇がいけなかった。
自分が自分の想像以上に弱っている事に、僕は気付いていなかった。
久し振りに激しく動いたせいだろうか……
突然急激に胸の痛みが沸き上がって、激しく咳き込んだ僕は膝を付いてしまう。
「沖田さんっ………」
有希ちゃんが前へ回って、男達から庇うように僕の身体を抱え込んだ。
「有希ちゃん……駄目…だよ。……下がって……」
ひゅうひゅうと情けない呼吸で喘ぎながら言っても、有希ちゃんはびくとも動かない。
「そら見ろ。この肺病病みが!」
「新選組の沖田も地に落ちたものだな。」
僕の相手をして息を切らせた男達が口々に悪態を吐いた。
「女……其処を退け。
我等はお前の命まで奪うつもりは無い。」
正直、僕はこれで有希ちゃんだけでも助かると安堵したのに、有希ちゃんは激しく首を横に振って一層強く僕を抱き締めた。
「有希ちゃん……退いて。」
「嫌です。」
「お願いだから……」
「嫌っ!」
そんな僕達のやり取りを見下ろしていた男の目が、鈍い光を湛えて見開かれる。
「良い覚悟だ……女。
ならば、お前も沖田と共に逝け。」
有希ちゃんに向かって振り上げられた刀先を見て、僕は渾身の力を込めて有希ちゃんの身体を引き寄せた。