【進撃の巨人】 never ending dream R18
第12章 強く結ぶ~剣舞~
隣の部屋から物音がした。
サラは読みかけの本に栞を挟む。
隣の部屋…そこは元々フラゴンの部屋であった。
前回の壁外調査でフラゴンが命を落としてからは、ずっと空き部屋となっていた部屋だ。
今日の夜、その空き部屋にミケが男子棟から移動してくる事になっていた。
サラが分隊長を退任し、後を任されたのは副分隊長であったミケだった。
本来であれば、分隊長を退任したサラの部屋を、ミケへ明け渡すべきなのだが、なぜかミケはそれを拒んだ。
「お前はすぐに分隊長へ戻れる。」
そう言っていた。
サラは部屋着から兵服へ着替えると、ミケがいる隣の部屋へと向かう。
「ミケ…何か手伝う事はないか?」
サラはドアをノックし、中にいるであろうミケに尋ねる。
「いや…特にない。」
予想通りの答えが返ってきた。
そもそも、いつ壁外で命を落とすか分からない調査兵団の兵士は、私物をあまり多く持たない。
特に決まりがあるという訳ではないが、自分がいなくなった後の事を考えると、自然とそうなってくる。
ミケも例外ではなく、私物はおろか、運ぶ荷物などほとんど無かった。
「サラ、中に入れ。」
部屋の中からミケが声を掛ける。
サラがドアを開けると、ミケは部屋の奥にある本棚へと、本を並べている最中であった。
サラはドアの近くに置いてあった椅子へと腰を下ろす。
そんなサラを、横目で見ながらミケがポツリとつぶやく。
「ひとりだと落ち着かなくてな。」
今まで男子棟の2人部屋にいたミケにとっては、話し相手のいないこの空間がとても不自然だったのだろう。
「君は確か…ゲルガーと同室だったか?」
「あぁ。2人でよく酒を飲んでは朝まで語り明かしたよ。」
男2人で、一体何を朝まで語っていたんだと、サラは笑った。