【進撃の巨人】 never ending dream R18
第35章 静夜思
◆
夜の冷たい空気のせいなのか、昼間はほとんど出る事のない咳が続く。
ベッドへ横たわっていたリヴァイは、あまりの苦しさに眠る事すら出来ない。
食いちぎられた脚をも再生してしまう巨人化の力。
そんな巨人化の力でさえも、病には敵わないのだという事を身をもって感じた。
そろそろ死期が近いのだろうか。
そう思い始めたのは数週間前からだった。
夜になると徐々に手足が冷たくなっていく。
それは20年前のあの日に感じた不思議な感覚ととても良く似ていた。
医者であるエレンも、リヴァイの身体の異変に気付いていたのだろう。
だからそこ、あえて普段通りの振る舞いをした。
相手の死を受け入れるという事は、相手の命を尊重する事。
医者であるエレンに、リヴァイはそんな事を教えられた気がしていた。
「………サラ?」
ふと目を開けると、サラの顔が見えたような気がし、リヴァイは思わず名前を呼ぶ。
数週間前からこうして時折姿を見せるサラの幻影。
全てを見透かしているように微笑むサラ。
触れようと手を伸ばせば消えてしまう。
夢と現実の間にいるような不思議な感覚がリヴァイを襲う。
サラに会えるのならば…夢であろうともかまわない。
そう思い、リヴァイはやがて訪れる死を待っていた。