【進撃の巨人】 never ending dream R18
第35章 静夜思
部屋へ戻ると、先ほどエレンから受け取った薬が机の上に置いたままになっていた。
リヴァイはそれを机の引き出しへとしまう。
今まで一度も飲む事のなかった薬。
それは“自然な最期”を迎えたいという思い。
薬を使ってまで命を引き延ばしたくはないという思いからだった。
20年前のあの日、リヴァイの命は終わりを迎えようとしていた。
しかし、不本意にもその命は巨人化の液体により、引き延ばされる事となってしまった。
サラの残した最後の命令。
“生きろ”の言葉を胸に今日まで生きてきたリヴァイであったが、サラのいなくなった世界を生き続けるには、20年という歳月は長すぎるように思えてならなかった。
ふと、リヴァイは引き出しの奥にしまい込んでいた手紙に目をとめた。
古びた封筒に入れられ2通の手紙。
その表にはサラ・スミス、そしてサラの弟であるトージ・スミスの名が記されていた。
差出人はサラの父親であるエルヴィン・スミス。
まだ封の切られていないその手紙を見つめ、リヴァイは小さく微笑んだ。
ウォール・ローゼ内に建つ調査兵団本部が取り壊される事となった日、リヴァイは団長室でこの手紙を見付けた。
ドアの上に飾られていたエルヴィンの肖像画。
その肖像画の額縁から手紙は出て来た。
生前、エルヴィン自身が隠したものだろう。
埃にまみれた手紙は、一度も封を開けた形跡がなかった。
父親であるエルヴィンが手紙に綴った事。
それは一体何だったのか。
もし、サラがこの手紙を読んでいたならばこの世界は何か変わっていたのだろうか…。
「いつかお前に渡せるといいんだが…。」
そうつぶやき、リヴァイはゆっくりと引き出しを閉じた。