【進撃の巨人】 never ending dream R18
第35章 静夜思
「………月が出ているのか。」
窓から差し込む月明かりに気付き、リヴァイはゆっくりとベッドから起き上がる。
サラがいなくなったあの日から、なぜか月を見ると心が安らいだ。
サラが団長室にカーテンを着けなかった理由、そして壁外調査から帰還する度に屋上で月を眺めていた理由。
今のリヴァイには、胸が痛いほどそれが理解出来た。
空高く輝く月は、愛する者の姿によく似ている。
サラが一体誰を想い、月を見つめていたのかは分からないが、リヴァイは愛するサラを想い、月を見つめる…そんな日々を繰り返していた。
引き戸を開け、縁側に出ると、そのあまりの明るさにリヴァイは目を大きく見開いた。
頭上高く昇った満月からは青白い光が降り注ぎ、地上に降りた霜かと疑うほどであった。
いつか見た光景だとリヴァイは思う。
それはリヴァイが初めての壁外調査を終え、帰還した日の夜。
初めてサラと心を通わせたあの日の夜だった。
そんな青白い光の中、あの日と同じように毛布にくるまる後ろ姿があった。
縁側に腰を下ろし、長い黒髪を夜風に揺らしている。
これは夢なのか、現実なのか…。
再び現れたサラの幻影。
触れようとするといつも消えてしまう。
触れたくとも触れる事の出来ない愛しいサラ。
「…こんな所で何してやがる?」
リヴァイはその後ろ姿へ、そっと手を伸ばす。
触れようとすれば…また消えてしまうのだろう。
それでも、今はサラに触れたい。
触れて…
そして、強く抱きしめたい。
しかし…
そんなリヴァイの問いかけにサラはゆっくりと振り返った。
全てを見透かしたような柔らかな微笑み。
「…今日は月がとても綺麗だ。」
そう答えるサラの頬に、リヴァイの冷たい指先がそっと触れた。