【進撃の巨人】 never ending dream R18
第35章 静夜思
「…リヴァイ兵長。」
玄関のドアをノックする音とともに、そう名前を呼ぶ声が聞こえた。
その声に、リヴァイはふと我に返る。
部屋の時計を見ると、時刻は4時を回っていた。
リヴァイはゆっくりと立ち上がり、玄関へ向かった。
「兵長、遅くなってすみません。」
そこに立っていたのは、白衣をまとい、少し慌てた表情を浮かべたエレンだった。
「急患が入ってしまって…。」
「いや、いいんだ。
それよりも、その呼び方はやめろ。
もう俺は“兵長”じゃねぇ。」
「はい。すみません。ついクセで。」
そう言うと、エレンはリヴァイへ丁寧に頭を下げる。
兵士時代の主従関係はそう簡単になくなるものではないのだろう。
部屋の中へ入るよう促すリヴァイに、エレンは何度も頭を下げた。
「…調子はいかがですか?」
「あぁ、変わらない。」
部屋に入り、鞄から聴診器を取り出すエレンの横で、リヴァイは服を脱ぐ。
週に一度の訪問診療。
病院嫌いのリヴァイを思い、エレンが厚意で始めた事だった。
調査兵団解散後、エレンもリヴァイ同様、このウォール地区に留まった。
しばらくはハンジの後を追いかけ、世界各地を旅して歩いたが、15年前、医者となりこのシガンシナに小さな診療所を開いた。
自身の父であるイェーガー医師と同じ道を歩む事となったエレン。
「まさか…お前が医者になるとはな。」
「どうしたんですか?いきなり。」
医者である今日の自分に、亡き父親の姿を見ようとしているのではないか…。
そう、リヴァイは思っていた。
それは、亡き父親の姿を追い、調査兵団団長となったサラの様で、リヴァイは大きなため息をつくと、部屋の窓から覗く青い空を見つめた。