【進撃の巨人】 never ending dream R18
第35章 静夜思
あの日、調査兵団は本当の意味での終わりを迎えた。
ウォール・ローゼ内にあった調査兵団本部の建物は取り壊され、その跡には慰霊碑が建てられた。
その慰霊碑には、かつて壁外調査で命を落とした調査兵団の兵士達の名が刻まれている。
“14代団長 サラ・スミス”
その文字だけが、サラがこの世に生きていた証となって残されていた。
調査兵団解散後、リヴァイとエレンだけが旧壁内であるこのウォール地区に留まった。
ハンジは世界中を旅し、現在は日本の蝦夷地と呼ばれる地区に拠点を置いている。
他の兵士達もまた、まだ見ぬ地を求め、旧壁外へと移り住んだ。
しかし、リヴァイはどうしてもこのウォール地区を離れる気にはなれなかった。
外の世界がどんなに素晴らしい場所であろうとも、この地を離れるわけにはいかない。
サラが生まれ育ったシガンシナ。
そこで子供達に剣舞を教える。
リヴァイにとって、それは亡きサラとともに生きる事だったからだ。
もし、あいつが生きていたなら、何と言っただろう。
そんな事を考え、リヴァイはひとり静かに紅茶を飲み続ける。
“君は剣舞が好きだったのか?”
そう、笑っただろうか。
あと数日後には、サラの命日がやってくる。
それは人類が巨人から真の平和と自由を取り戻した記念の日でもあった。
しかし…
そんな人類の記念日よりも、サラが生きている毎日はどんなに素晴らしかっただろうとリヴァイは思う。
旧調査兵団本部跡に建てられた慰霊碑よりも、サラが生きているという事が、どんなに意味があっただろうか。
そんな事を考えていると、どこからかサラの笑い声が聞こえたような気がし、リヴァイは縁側に並べたティーカップを眺める。
決して空になる事のない紅茶。
その紅茶に、サラの顔が浮かんで見えた気がし、リヴァイはティーカップへと手を伸ばす。
あの日から、リヴァイは片時もサラを忘れた事はなかった。