【進撃の巨人】 never ending dream R18
第35章 静夜思
縁側に並べた2つのティーカップ。
何とも不釣り合いな光景に、最初はリヴァイ自身も笑いがこみあげた。
しかし、こうして紅茶の香りに包まれながら空を眺める時間は、リヴァイにとってはとても心安らぐ瞬間となっていた。
「…日本はそろそろ雪が降る頃だろう。」
そうつぶやき、再び空を見上げる。
数日前にハンジから届いた絵葉書には、美しい日本の山々の写真とともに『初霜が降りました』の文字が添えられていた。
20年前のあの日、生き残ったのはリヴァイとハンジ、そしてエレン・イェーガーと数名の兵士だった。
巨人化出来る液体を飲み込んだリヴァイは、巨人化した後、運良く人間の姿へと戻る事が出来た。
再生された両脚。
気が付くと、リヴァイは冷たくなったサラの亡骸を抱き締めていた。
ただ、風の音だけが空しく聞こえるシガンシナの草原。
生臭い血の臭いだけが辺りに漂う。
もう二度と動く事のないサラの身体を、リヴァイはいつまでも抱き締め続けていた。
世界から巨人が消え、壁が無くなり、人類が真の平和と自由を取り戻したあの日、この世界の真実が明らかになった。
それはエレン・イェーガーの自宅地下室。
サラ、そしてサラの父親であるエルヴィンがたどり着く事の出来なかったこの世界の真実。
全ての答えは地下室にあった。
リヴァイは縁側に腰を下ろし、紅茶を一口飲み込む。
瞳を閉じれば、まるで隣にサラがいるような…そんな不思議な感覚に襲われる。
いつかこの世界の真実を、サラに話したいとリヴァイは思う。
父親であるエルヴィンの“使命”を、自身の“使命”だと考えていたサラ。
真実を知ったら、あいつは一体何と言うのだろうか。
この20年、リヴァイはそればかりを考えていた。