【進撃の巨人】 never ending dream R18
第34章 命令
徐々に薄れていく意識。
ゆっくりと夢の中へ落ちていく様な不思議な感覚がリヴァイを襲った。
瞼の裏に浮かぶのはサラの姿。
出会ったあの日からの出来事が、灯火のように甦っては消えていった。
出会ったのは地下街だった。
恐ろしささえ感じる美しさに心を奪われた。
それと同時に、人生最大の屈辱を味わった。
殺そうと思っていた。
しかし…
気が付けば心を奪われ、守りたいとすら思うようになっていた。
“リヴァイ…。もし良ければ、私の部屋で一緒に飲まないか?”
そう言われ、団長室で紅茶を飲んだのは寒い夜の事だった。
あれはリヴァイが調査兵団へとやってきて3年が経った頃だ。
壁外調査の事後処理に追われるサラを気遣い、温かい飲み物を届けようとしたリヴァイであったが、給湯室にいる所をサラに見つかり、団長室で一夜を過ごす事になってしまった。
ソファーに座り、向かい合うように抱き合った。
ひとつに結わえたサラの長い黒髪を解き、指先に絡めた。
その髪に、リヴァイはそっと口づけた。
“キスは唇にするものだよ。”
そう言い、サラはリヴァイにキスをした。
“紅茶の味がする。”
ふふっと微笑むあの日のサラは、年齢よりも随分と幼く見えた。
“紅茶は苦手なんだろう?”
“悪くないよ。”
リヴァイはテーブルのティーカップに手を伸ばすと、
わずかに残る紅茶を口に含んだ。
そして、瞳を潤ませるサラの唇を割り、流し込んだ。
そんな他愛のない出来事がとても幸せだったとリヴァイは思う。
柔らかなサラの唇。
もう一度触れたかったと、リヴァイは瞼の裏にサラの姿を映し続けた。