【進撃の巨人】 never ending dream R18
第34章 命令
ふと、リヴァイは唇に柔らかな感触を感じた。
生と死の間。
薄れていく意識の中で、温かく心地よい感触が唇に伝わった。
それがサラの唇である事に、リヴァイはすぐに気が付いた。
幾度となく口付けてきたサラの唇。
愛する女の唇。
その唇はリヴァイの唇を割り、そっと何かを流し込んできた。
夢の中にいるような不思議な感覚の中、リヴァイは流し込まれた液体を飲み込む。
ここは死後の世界なのだろうか。
もうそれすら分からない。
執念にも似た想いが、こうしてサラの感触を思い起こさせているのだろうとリヴァイは思う。
もしあの日に戻れるのならば…
団長室で過ごしたあの日に戻れるのならば、手に手をとって逃げようか。
この狭い壁の中をどこまでも。
そんな事を、リヴァイはぼんやりと考えていた。
しかし、
次の瞬間、口の中に広がったのはあの日のような紅茶の味ではなかった。
リヴァイは驚き、手放しかけた意識を取り戻す。
うっすらと開けた瞳。
その瞳に映ったのは、どこまでも続く青空と、傷だらけのサラの顔だった。
「…テメェ…余計な事するんじゃねぇ………」
リヴァイはそうつぶやく。
先ほどサラに飲ませたつもりでいた巨人化出来る液体。
その液体を、サラは飲み込まずにリヴァイへ飲ませたのだろう。
リヴァイの瞳に映るサラの顔。
それは顔は、いつものように全てを見透かしているような表情だった。
「…リヴァイ、生きろ。
これが“最後の命令”だ。」
サラはそう言うと柔らかに微笑んだ。
【命令】おわり