【進撃の巨人】 never ending dream R18
第34章 命令
リヴァイはジャケットの内ポケットから注射器を取り出す。
血液で濡れた箱の中、注射器の針は外れていた。
再び針を接続している暇などない。
リヴァイの痺れた指先ではもう、サラの身体に注射を射つ事すら困難だった。
地面を這い、リヴァイはサラのもとへと向かう。
どうか…どうか間に合ってくれと、仰向けに倒れるサラへ手を伸ばした。
身体の痛みなど既に感じない。
自分の命もまた、終わりを迎えようとしているのだろう。
それでもリヴァイは最後の望みをかけ、サラへと必死で手を伸ばす。
触れようと思えば簡単に触れる事が出来ていた。
そんな日々が今は懐かしいとすら感じていた。
「………サラ………」
そう呼び掛け、リヴァイはわずかに開いたサラの唇へと液体を流し込んだ。
弱々しくも上下に呼吸を続けているサラの胸。
このままサラが巨人化すれば、命を引き延ばす事が出来るだろう。
リヴァイを見つめるサラの青い瞳からは一筋の涙がこぼれていた。
「…じゃあな。」
そうつぶやくと、リヴァイはその場に倒れた。
もう自分に出来る事はないだろう。
そう思い、静かに瞳を閉じる。
いつかサラと話した、死への恐怖。
“もし、人間に痛覚が無ければ、死への恐怖は無くなるのかな?”
そんなサラの言葉を、リヴァイは思い出していた。