第32章 エルヴィン・スミス②

それから間もなくだった。



サユリが事故に遭い、命を落としたとの一報が入ったのは。



シガンシナ区に住むはずのサユリが、どうして百数十キロも離れたトロスト区で事故に遭うのだろうか。



あまりにも不自然な死。



俺は初めてサユリと出会った日の事を思い出す。



湖のほとりに立ち、壁外の文化である不可思議な呪文のような詩を詠っていた。



それはこの壁の中では御法度とされる行為。



サユリは突然現れた俺を憲兵と間違え、自害しようとした。





そんなサユリが不自然な事故に遭い、命を落とした…。



考えられる事はただひとつ。





憲兵団に襲われた。





それしか考えられなかった。