【進撃の巨人】 never ending dream R18
第31章 永久に碧く~月の歌~
頬を撫でる冷たい夜風。
いくら月を見上げようとも、私の心が癒える事はなかった。
もともと酒は弱い方だ。
飲み慣れない葡萄酒に、今まで感じた事のないような眩暈がした。
大きくため息をつき、私はマントの裾を握り締める。
心の中に沸き起こるのは、やはり激しい後悔と絶望感だった。
ふと、握り締めたマントの中に何か硬い物がある事に気が付いた。
小さな石ころのような硬い物。
一体何だろう。
私は不思議に思い、マントの内ポケットを探る。
深めの内ポケットから出てきた物。
それは、父がいつも身に付けていたループタイだった。
“肌身離さず持っていたいんだ。”
父が巨人に食い殺されたあの日、切れかけていたループタイ。
落としてしまっては困るだろうと、「お預かりしますか?」と尋ねた私に、父は少し考える素振りを見せ、切れかけたループタイをゆっくりと外すと、マントの内ポケットへと大切そうにしまっていた。