【進撃の巨人】 never ending dream R18
第31章 永久に碧く~月の歌~
父の後ろ姿。
それは血で汚れながらも、力強く羽ばたく自由の翼。
父の傍らには葡萄酒のボトル、そしてなぜかグラスが2つ並んでいた。
父は私の存在に気付かぬまま、空高く昇った月をじっと見つめていた。
父はグラスを手に取り、葡萄酒を一気に飲み干と、もう片方のグラスには手を付けず、空いたグラスに再び葡萄酒を注いでいた。
初めて見る父のその姿は、いつもの非情で冷酷な父とは違い、わずかに人間らしい弱さが滲み出ているように感じたのを覚えている。
ゆっくりと月を見上げ、父は優しく穏やかな口調でこう言っていた。
「あの時…君をひとりにしてしまった事を、今でも後悔している。
いつか償いが出来るといいんだが。」
まるで月に語りかけるようなその言葉。
父にも救う事の出来なかった“仲間”がいるのだろうと、あの日の私は思ったのだった。