【進撃の巨人】 never ending dream R18
第31章 永久に碧く~月の歌~
弟がいるであろう場所へ向け、必死で馬を走らせた。
痛い程の雨粒が顔にぶつかる。
わずかに目を開けているのがやっとだった。
ふと、幼い頃の弟の姿が頭に浮かんでは消えていった。
泣き虫で、甘えてばかりだった弟。
誰からも愛され、いつも父やクレアを独占していた弟。
…いつだっただろうか。
あれは母がいなくなってしまった日。
“トージ、先に行かないで。”
歩くのが大好きだった弟は、私を追い越し、ひとりで先を行ってしまった。
あの日も弟を必死で追いかけながら、遊び場である広場へ向かった。
弟が配置されていたのは、右翼側次列五。
私は手綱を握り締め、馬の速度を上げる。
弟だけは絶対に死なせはしない。
そう…強く思った。
その時だった。
ふと、霧の向こうに黒い煙らしきものが見えた。
それは篠突く雨にかき消され、空へと上る事は無かったが、確かに黒の信煙弾だった。
「奇行種!?」
私はそう叫ぶ。
霧の中、進煙弾を持つ兵士の腕が見えた。