【進撃の巨人】 never ending dream R18
第30章 永久に碧く~想い~
「ところで、マリーさんはお元気ですか?」
あまりにも突然なサラの問い掛けに、ナイルは少し面を食らったような表情を浮かべた。
「突然、何だ?」
「いえ、“3人目”が産まれたそうですね?」
「あぁ。」
「可愛いですか?」
「まあな。
お前だって調査兵になどならなければ、今頃子供だっていたかもしれない。
エルヴィンだって、それを望んでいただろう。」
「父がですか?
それはあり得ないと思いますが…。」
「あのなぁ、サラ…。」
ナイルは腕を組み直し、再び深いため息をついた。
父親であるエルヴィンの訓練兵時代からの親友であるナイル。
サラにとっては幼い頃からよく知る存在だった。
エルヴィンの死後も何かとサラを気遣ってくれてはいたが、ナイルの言葉はどこか説教じみていて、正直それがうっとうしいと思う事もあった。
反抗期の娘に手を焼く父親のような表情を浮かべるナイルを見て、こんな事ならば1人で兵団総司令部へ向かうべきだったと、サラは近付き始めた司令部の建物を見上げながら思った。
「ところでサラ。
お前は“エリク”の事を覚えているか?」
“エリク”
その名前にサラは驚き、青い瞳を大きく見開く。
かつて愛した男の名は、8年経った今も、身を焦がすような恋の思い出とともに、サラの心に深く深く刻み込まれていた。
「今度、エリクが結婚する事になってな。
叔父としてはとても嬉しい。
アイツの両親は何年も前に他界している。
早く自分の家族を持ってほしいと…そう思っていた。」
「そうですか。」と、サラは短く応える。
エリクへの想いはとっくに過去のものへと変わっていたが、かつて愛した男の話は、正直あまり聞いていて楽しいものではない。
しかし、窓の外を眺めながら黙り込むサラの心を無視するかのように、ナイルはエリクの話を続けた。
「お前、エリクに惚れていたんだろ?」
「もう、過去の事です。」
「エリクもお前に惚れていたはずだ。」
「…それでも、私達は一緒にはいられませんでした。」
「なぜ、そう思うんだ?」
「“兵士”の恋など、叶わぬ運命だったんです。」